第3宇宙の東部辺境、星間暦2094年の冬——龍一が初めて「時の亀裂」を目撃したのは、幼い頃に暮らした山岳都市の夕暮れ空においてだった。空に走る光の裂け目は、誰の目にも映らなかった。幼少期から時間の流れを肌で感じ取る力を持っていた彼にだけ、その異変は見えていたのだ。大人たちは彼の話を信じなかった。しかし、龍一は確信していた——あの光の傷が、宇宙そのものへの警告であると。
成長した龍一は、時間守護者評議会の候補生として選抜された。評議会は複数の宇宙にまたがって存在する秘密組織であり、時空の連続性を維持するために設立された。訓練の過程で彼は時空刀——時間の流れそのものを刃として具現化した特殊な武器——の扱いに習熟し、31歳にして最年少の正規守護者となった。その卓越した直感と時間操作能力は、歴代の守護者の中でも群を抜いていると言われている。
しかし、任務は過酷だった。時間の乱れを修正するということは、本来存在すべき「原因と結果」の鎖を正しい位置に繋ぎ直すことを意味する。それはしばしば、誰かの記憶を書き換え、誰かの出会いをなかったことにし、誰かの死を受け入れることを強いた。龍一は何度も迷い、何度も苦しんだ。正しいことと、つらいことが、いつも同じ顔をしていた。
やがて龍一は、宇宙間に広がる時空断層の根源に「意思を持つ亀裂」が存在することを発見する。それは単なる物理的な歪みではなく、何者かによって意図的に生み出されたものだった。彼の使命は、個々の時間の修正から、宇宙規模の陰謀への対峙へと変わっていく。盟友キラ・ヴォイドとともに、龍一は時間の果てへと踏み出した。